「 初 恋 」

初めてあなたを見た時、全ての時が止まってしまったように思いました。
本当はすべてなにも変わらず動いていたはずなのに、私の中の時計は止まったのです。
ほんの一瞬の、学校の中の出来事でした。

私とあなたは近い場所にいるはずなのに、それはあまりに遠く、近づけそうにない
ものでした。
ほんの数m先にあなたがいて、時には数cmにまで距離は縮んで・・・
手を伸ばせばあなたの手に触れることが出来ました。
それなのに、私にはそれができませんでした。

私は臆病でした。何も知らない子供だったんです。一人ではあなたに話し掛けることも
できず、ただ目で追うことが精一杯私の気持ちを助けてくれるようでした。

あなたに私の気持ちを伝える事で、傷付くことは目に見えていました。
私はそれを恐れていました。やはり自分が可愛かったのです。
自分の気持ちを守る為に、あなたに近づこうとはしませんでした。
こんな臆病な私をあなたは軽蔑するでしょうか・・・。

あなたの授業がある日は、丁寧に髪をとかしました。鏡の前で自分の顔をまじまじと
見て、可愛くもない顔が嫌いでたまりませんでした。
休み時間には制服のスカートをきれいにして、ワイシャツもネクタイもちゃんとして、
あなたは気付かないとわかっていながら、そんなことをせずにいられなかったんです。

毎日、変わらない日常の中にあなたの存在が入り込んでいました。
どんな時もなにをしていても心のどこかにあなたがいました。
偶然、ほんの一瞬すれ違うだけなのに私の心臓はいつもの何倍も速く動いていました。
あなたに会えたことが嬉しくて、自然と笑顔がうかんできます。
だけどその直後、ひどく切ない気持ちになりました。
その理由はわかりきっていました。

私はとなりをすれ違ったただ一人の人に過ぎない。
考えないようにしているそんな事実を、痛感せざるを得ない時なのです。

あなたと私は永久にこれ以上距離が縮まることはない。卒業すれば平行線から
どんどん遠のいていく。
私は知っていました。
あなたと私の道が、交わることは決してない、と。
けれど、それでもどうしてもやっぱりなにかを期待しないではいられませんでした。
そうでなければつらくてつらくて、片思いなんてやっていられないものですね。

ある時窓の下を見ていたら、そこをあなたが通りかかりました。
もう秋の季節だったけど、その日はやけに暖かくて汗ばむくらいだったのを覚えています。
あなたは長袖のワイシャツを肘のところまでまくりあげていました。
そして重そうなダンボールを抱えて・・・。

その時の気持ちを私は言葉では言い表せそうにありません。
言えることといえば涙が出そうだった、というくらいのことでしょう。
そしてひどく心臓が、いえ心が痛かった。

なぜかはわかりませんが、その時ずっとため込んでいた思いが溢れました。
もうどうしようもないくらい、感情が一気に涙になったのです。
どうしたらよいかわからなかったけれど、ただそのままに任せました。

私はやっぱりあなたが好きでした。
どんなことがあってもなにがあってもやっぱりあなたが大好きでした。
年齢がどうとか、顔がどうとか、そんな問題ではなくあなたが好きでした。
もしあなたとどうにかなっていたら、私はどれだけ神様を信じたかわかりません。
奇跡なんていう、世界の違う言葉さえ信じることができたでしょう。

私は正直言って、今でもとても心が痛い。
悲しいとかそんな言葉では言い表せそうにない切なさです。
私ももう卒業です。そろそろ大人にならなければならない時期がきたんでしょう。
あなたも、偶然こんな時期に結婚なんて。
おめでとう、なんて言えそうにありません。だって私はあなたが好きなんですから・・・

失恋は悲しいですね。涙がでないくらい感情の波が止まっていました。
あの時、私の中の時計が止まった時とは違う、別の理由で。

やっぱり今あなたに言うとすれば、ありがとう、の5文字でしょうか。
私の知らなかった切なさや、喜びや、醜い感情を前に引き出してくれました。
叶わない恋は、やっぱりつらいものです。
だけどやっぱりあなたのおかげで、幸せも感じました。
見返りを求めない行動なんてしたことのなかった私ですが、私の中のめまぐるしい感情
達は、明らかに一方的なものでした。
私を少し大人にしてくれたみたいですね。あなたは知らないでしょうが。

私はあなたを決して先生とは呼びません。そうすることで、少しでもあなたと距離が
なくなるような気がして、それであなたと少しでも対等の立場に立てたなら、それは
たとえ自己満足であったとしても私は構わないのです。

あなたを先生と呼べば、あなたはあまりに遠い人で私は決して近づくことはできないところ
にいるんです。
あなた、と呼ぶことは私が手を触れることができない領域の壁に対する、初めての
ささやかな反抗でした。

私の初恋は終わりました。
これで本当に、全て終わりです。

あなたは私のすべて、たった一度きりの甘く苦い純愛でした。

こんな気持ちはもう一生味わうことができないでしょう。
いつか、それを笑って話せる時がきたらそれが私の大人になった時でしょうね。
だから今だけ一度きり、本当の気持ちを。

― 私をあいしてください ―

 


*管理人から一言*

うぎゃあーもう・・・ははは・・・
あとは野となれ山となれ(逃亡)





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