「 午 後 」



日曜日、青空、春。こんな日は二人でお気に入りの本を持って、散歩がてら小さな旅に出る。

見慣れた道、吠える犬、この前はつぼみだった小さな花。

たどり着くのは芝生の上。寝転がって、流れる雲を目で追いかけて、眩しくて目を細めて、

そのまま瞼が重くなって、いつのまにか懐かしい夢を見ていた。

いつまでもいつまでもそうしていたいような風。通り抜けて目が覚めた。

シアワセで、幸せで、その筈なのに、いつのまに慣れてしまったんだろ。

隣りに君がいることに。

目を開けると、いつだってページをめくる君がいる。当たり前のように。

あの頃は違ったはずなのにね。隣りには、君にいて欲しかった。だけど君は私の隣りにはいなかった。

何度夢を見ただろう。君がここにいたらって。悲しくて涙がさえこぼれた。

初めて君がここに「行こうか」って言ってくれたのはいつだっただろ。ずっとずっと

前のような気がする。

嬉しくてうれしくて、ずっと隣りにいる君を眺めてた。髪が揺れる。Yシャツの間を風が通り過ぎた。

寝ていた君が目を開けた。目が合って照れくさくて笑った。

笑った君の横顔を、ずっとそっと見ていた。

今は、あんまりちゃんと君の事見ていないね。飽きたわけじゃないんだけど、

見慣れちゃったせいかな。幸せに慣れちゃったせいかな。

大きな木の木陰は、夏になると涼しい風が吹いてる。木漏れ日がゆりかごみたいに揺れる。

草が、揺れて、ちくちく頬にあたって、生きている匂いが、風で舞い上がって

意志もなく、流されて、私達を包み込んでいる。

さわさわ、さわさわ、小さな、微かな命の音がする。

お日様が傾いた時、「帰ろうか」ってふと君が言う。いっつもいっつも。

読みかけた本に栞を挟んで、もう歩き出した君の後をついていって、そっと手を

つなぎたい。のっぽな影がつながるのもたまにはいいじゃない。

背中がとっても広いんだね。お日様の匂いがうつった背中がとっても好き。

シアワセに慣れるって悲しいね。「アタリマエ」に落ちていきたくはない。

せめて、当たり前の日常に流されそうな日々をこんな「シアワセ」で彩りたい。

そして変わってしまいそうな私を、君が引き止めてくれるのが本当はちょっとうれしい。

だから、私にとって、君がそこにいることがきっと、幸せ。

君がいつか消えてしまわないように、かみしめていたいね。

今度またこようね。風が優しく吹き抜ける日にこようね。君の気が向いた時に、

また背伸びしながら「行こうか」って後ろから言ってほしい。

そんな春の日に。幸せだなぁって感じたい。

おわり。

 


* あとがき *

う〜ん・・・ストレスがたまっているのでしょうか・・管理人。
それは置いといて、このお話はいろんなものが合わさって出来上がりました。
1つには私の好きな太田朋さんの、絵と文のポストカード。そして、荒井由実
(現・松任谷由実)さんの「卒業写真」という歌の歌詞の一部です。
「♪人込みに流されて〜変わっていく私をあなたは時々遠くで叱って♪」
だっけ・・・エンドレスで管理人の頭をまわり続けていました・・・
そして、最後にある夫婦。本当にこういうことをしている夫婦がいらっしゃる
のを見て、ちょっと憧れ。フランス在住の国際結婚カップルです*
私が言う事は一つ。「一度でいいからしてみたい♪こんな生活。」
モデル・・・は男性はいます。女性は、どこにでもいそうな女の人を想像しました。
因みにこのお話の二人は夫婦、という設定。そして、この話の旦那さんはとても
優しい人です。しかし実在のモデルさんがこういうのをしてるのは見た事がありません。
してくれたら最高!なお方なんですが・・・・。ふ・・。

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